COLUMN

探偵と興信所、浮気調査はどちらに頼む?

浮気調査は「探偵社」「興信所」という名前だけでは選べません。調べ方、人数、料金、報告方法は会社ごとに違います。契約前の書面で、何を、どこまで、いくらで調べるのかを確認する理由を、東京赤坂支店の森田がお伝えします。

明日から「興信所」と名乗っても、私が賢くならない理由

たとえば、駅前の雑居ビルを見上げたら、三階に「○○探偵社」、五階に「△△興信所」の看板が出ていたとします。

同じビルです。同じエレベーターで上がります。押すボタンが違うだけで、抱えている悩みは同じかもしれません。それなのに、看板を見上げた私の頭の中では、もう別々の人が働き始めています。

(五階の興信所……。受付で、眼鏡の人が名刺を両手で差し出してきそうだ)

(三階の探偵社……。ブラインドの隙間から西日が差して、机に足を乗せた私のような男がグラスを揺らしていそうだ)

五階は銀行の応接室。三階は古い映画。エレベーターで二つ上がるだけで、時代まで変わってしまいました。

あなたなら、どちらのボタンを押しますか。

探偵と経営を15年やってきて、これです。前回、「報告書に憶測は書かない」と偉そうに書いた人間の頭の中が、看板ひとつでこの有様です。

名前の印象だけなら、興信所の圧勝

さっき、五階を銀行の応接室にしてしまいましたが、まるっきり見当違いでもないようです。

興信所の歴史をたどると、明治の大阪で、元日本銀行大阪支店長がつくった信用調査会社に行き着きます。

この相手と取引して大丈夫か。お金はきちんと払ってもらえるか。商売相手の信用を確かめる仕事です。銀行からの出資も受けていて、金融業の系統なのです。

一方、こちらは「探偵」。探って、偵(うかが)う。やっぱり、字だけなら物陰にいる人です。

銀行の流れをくむ人と、物陰からうかがう人。
名前から想像する人柄だけなら、興信所の圧勝です。

私が明日から「興信所」と名乗れば、少し賢そうに見えるでしょうか。名刺の文字を変えても、中の私はそのままですが。

私が名刺を渡すときに、よく言われるのが「えっ? 探偵さん? カッコいい! やってみたい!」

(ふっ。テレビの見過ぎですよ)

テレビで言えば裏方です。調査設計を立てるプロデューサーでもあり、現場で何時間もロケ車に詰めるADでもあります。華やかなドラマの主人公というより、地味に現場を支える裏方そのものです。

名刺を渡すときは「探偵です」。現場では「探偵だ」と思われたくない。同じ私なのに、場面が変わると、相手に気付いてほしいことが正反対になります。面倒な商売です。

本物の探偵は、探偵に見えない。 現場では、カメレオンのように、その街の人にまぎれることが仕事になります。ブラインドの前でグラスを揺らしている場合ではありません。

黒いパーマとひげ、黒い服の森田を基にしたキャラクターが、東京の街で通勤する人たちにまぎれて歩くアメコミ風イラスト

聞いたら、分からなくなることもある

調べる、とひと口に言っても、聞けば分かることと、聞いた途端に分からなくなることがあります。堂々と名乗って聞く調べ方もあれば、密かに確かめる調べ方もある。

たとえば、浮気を疑っている相手に「あなたを調べています」と伝えたら、明日から行動が変わるかもしれません。

(どうぞお気になさらず、いつもどおりに……とは、さすがに言えません)

知りたいのは、そう言われる前の姿です。自分の足で追い、見て、確かめる。そんな仕事には、「探査」という言葉がしっくりきます。机で調べものをしているだけでは済まない感じが、「探る」の一字にあります。

ただ、堂々と聞くか、密かに確かめるかが、看板の名前だけで決まるわけではありません。

看板の名前で、仕事は変わらない

冗談はさておき、ここは看板の話で終わらない、大事なところです。

浮気調査を頼もうと思ったとき、「探偵社」と「興信所」、どちらを選べばよいのか。
答えは、名前で選ぶ必要はない、です。

いまの法律は、看板の文字ではなく、やっている仕事の中身で探偵業かどうかを決めています。誰かに頼まれて、特定の人がどこにいて何をしたのかを実地で調べ、その結果を報告する。

この仕事をしていれば、看板が「探偵社」でも「興信所」でも、同じルールの上に立ちます。浮気調査は、まさにこの仕事です。

名前によって、特別な資格が付くわけでもありません。そもそも探偵業は、特別な資格がなくても、営業所ごとに届け出て始める仕事です。

届け出たからといって、特別な権限がもらえるわけでもない。眼鏡の受付も、グラスの男も、法律の上では同じ服を着ています。

歴史の上では、興信所はたしかに「信用を調べる」ところから始まりました。けれど、いま浮気調査の相談で扉を叩くとき、その名前が中身を保証してくれるわけではありません。探偵社という名前も、同じく何ひとつ保証してくれません。

……いま、少しだけ自分の首を絞めた気がしてます。

では、名前で違いが決まらないなら、どこで違いが出るのか。調べ方も、人数も、料金も、報告の渡し方も、会社ごとに違います。違いがあるのは看板の文字ではなく、扉の向こうのほうです。

前回の「一枚の紙」

前回の最後に、「看板の名前より先に確かめてほしい、一枚の紙」と書きました。

探偵業者は、契約を結ぶ前に、契約の大事なことを書いた書面を渡して、説明しなければならないことになっています。私が言っていた紙は、これです。

何を、どこまで調べて、いくらかかるのか。看板ではなく、文字として机の上に出てきます。

白状すると、一枚とは限りません。前回は、話の都合で一枚にしました。

この紙を前にしたとき、私がいちばん先に見てほしいのは、「何を調べるか」の書き方です。前回、心は尾行できない、と書きました。紙の上でも同じで、「本心を確かめる」とは書けないはずです。

書けるのは、いつ、どこからどこまでの行動を確かめるのか。そこが事実の言葉で書かれているかどうかは、看板の名前より、ずっと多くのことを教えてくれます。

もう一度、あのビルの前で

三階の探偵社と、五階の興信所。グラスの男も、名刺の眼鏡の人も、実は私の頭の中にしかいません。確かめられるのは、どちらの扉を開けても、机の上に出てくる紙のほうです。

看板は、私の想像をふくらませる。紙は、その想像を止めてくれる。

名前ひとつで頭の中の時代まで変えてしまう探偵だからこそ、私は紙の言葉を信じることにしています。


ところで、その紙を広げる前に、あなたはまず誰かに、話しにくいことを話すことになります。 その話は、どこまで守られるのか。 次回は、当支店の相談員がその問いに答えます。


参考

ご自身の状況について、まずは相談から。

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