COLUMN
探偵が尾行しやすい場所、しにくい場所は?
探偵が尾行しやすいのは、相手が見えて自分が目立たない場所。東京駅の人混み、港区の六本木ヒルズ、電車からタクシーへの乗り換えを例に、尾行の難しさと下見・調査設計の必要性を代表・森田が語ります。

相手は見たい。私の顔は、覚えないでほしい。
相手が見えて、私が目立たない場所です。 問題は、その二つがなかなか揃わないことです。
代表の森田です。
前回の続きです。
『人が多いところなら、紛れられるんじゃない?』
ええ。そこは、本当に助かります。
ただ、紛れるのは私だけではありません。
東京駅で、同じ背中が二つに増える
例えば、東京駅で対象者を追うとします。
人がいるので、こちらも歩いていて不自然ではない。相手から少し離れても、私一人が道に取り残されるわけではありません。
ところが、改札を出てきた人たちが間に入る。さっきまで見えていた相手の背中が、肩と肩の向こうへ消える。
同じような黒い上着が、右にも左にもいる。
『どっちだ』
服だけ覚えていたら、ここで困ります。似た人を追いかけて、角を曲がって顔を見たら別人。
私はその人の顔を見つめ言います『あの〜すみません。あなたは誰ですか?』
見失わずについてきたつもりで、途中から違う人を追っていた。
これは、ご依頼者様に笑っていただける話ではありません。
顔を確かめようと近づけば、今度は相手にも私の顔が見える。前回お話ししたように、すでに警戒している相手なら、なおさら近づきたくない。(単独調査の場合ですよ?)
電車に乗れば、乗る瞬間と降りる瞬間にも気を取られます。離れていたところで、扉が閉まる間際に相手が降りた。相手はホーム、私は車内。電車は私だけを運んでいく。
『さようなら。また明日。会った事ないけど。』
相手の行き先を知りたかったのに、私の行き先だけ決まってしまうわけです。

では、人のいない一本道ならどうか。
背中はよく見えます。ところが相手が立ち止まったら、私はどうするのか。そのまま近づくのか、一緒に止まるのか。追い越せば、今度は顔を見られる。(何度も言いますが、単独調査の場合です)
家の前で立ち止まれば、その家の方の目もあります。対象者だけ見ていたら、こちらを見ている人を見落とします。
人混みでは相手を探し、一本道では自分の居場所に困る。人の数だけで、楽かどうかは決まらないんです。
建物に入れた。さて、相手は見えるのか
例えば、行き先は分かっている。港区で言うと「六本木ヒルズ」です。
それなら先に行って待てばいい、と思いますよね。
ただ、中で食事をするのか、入口で誰かと合流するのか。そのまま別の場所へ移るのか。複数ある出入口のどこを見ればいいのか。
一つの入口を見ている間に、別の出口から出られたら分かりません。建物の名前が分かったところから、私たちの配置を考える話が始まります。
相手が飲食店に入ったとします。
ガラス越しに席が見えるなら、私は外にいたい。中へ入って顔を見られる理由を増やすより、そのまま確認できるほうがいい。
外から見えない店なら、中へ入ることを考えます。
賑わっている居酒屋なら、隣の席にも、その隣にも客がいる。
近くに座っても、私も一人の客でいられる。こういう店は助かります。
ところが、案内された席から相手が見えない。
『こちらへどうぞ』
心の中では『あ〜違う違う!そっちじゃない。。。』。同じ店には入れました。でも、同じ店にいるだけです。
小さな常連さん中心の店なら、扉を開けた私に視線が集まる。こちらは相手を見に来たのに、まず私が見られる。
エレベーターも、人数で居心地が変わります。
ほかの乗客がいれば、その中に混じれる。相手一人のところへ私が乗り込めば、二人きりです。
先ほど道にいた男が、またすぐそばにいる。警戒している相手に、その顔を見比べる時間を渡したくない。
一方、乗らずに階数表示を見る方法が使える建物もあります。止まった階に行き先が一つしかなければ、無理に同乗しなくても絞り込める。商業施設では、降りた階が分かっても、その先に店や通路が広がっている。
同じ「建物に入った」でも、こちらが確認できる範囲は、これだけ違います。
歩いていた相手が、タクシーに乗る
徒歩で追っていた相手が、急にタクシーを止めたとします。
こちらも車へ移る必要がある。でも、その場に車がなければ、相手の出発を見ることしかできません。足が速いかどうかの話は、ここで終わりです。
車で追えたとしても、間には一般の車が入ります。
相手は交差点を抜けた。私の前の車が止まり、信号が赤になる。相手は先へ進む。こちらは止まる。
工事や踏切でも、同じように切られます。
相手が警戒していなくても、こちらを撒くつもりがなくても、道路の事情で離される。
それなら真後ろにつけばいいか。今度は、相手のミラーに同じ車が映り続けます。
徒歩なら、相手が振り返ったことを見られる。車では、運転している相手がどれだけ後ろを気にしているのか、こちらから顔を見て確かめにくい。
タクシーなら、相手自身は運転していません。後部座席から後ろを向かれれば、こちらの車は見える。相手がハンドルを握っているときと、同じつもりでは追えません。
だから、ご相談で「普段は電車です」と伺っても、帰りだけタクシーに乗ることはないか、と知りたくなります。
いつ、どこで、移動手段が変わるのか。そこで調査員や車をどう動かすかが変わるからです。
道を歩いて下見する。建物の出入口を見る。車の出入りを確認する。
伺った予定を、実際の場所に当てはめてみる。
相手が出てきてから、『あ、そっちにも出口があったのか』では遅いんです。
最後に。私は尾行しやすい場所の話しましたか?・・・。
次回は張り込みです。追っている間ではなく、同じ場所で待ち続ける間に、周囲の人からどう見られるのか。声を掛けられたらどうするのか。今度は、そこをお話しします。